香綾会コラム

No.52「時を越えて」

    

相川 理沙(高54回生)

卒業して、気づけば10年。 10年目の今年、久しぶりに香椎高校を訪れました。ほとんど変わらないその景色に、一歩中に踏み入れば、あの頃の風景が色鮮やかに蘇りました。

「進路」この2文字は16歳の私にとって重たいものでした。好きな仕事に就きたい。それは誰でも思うこと。私は歌うことが好きでした。歌手なんてほんの一掴みの確率・・・。自信もなければ勇気も出ない、何もやらないで諦めていました。

香椎高に入学して、生徒が作り上げていく沢山の行事、一人一人が主張できる環境の中でふつふつと芽生え始めた感情がありました。その始まりが体育祭でのチアリーダーでした。限られた人数の中で選ばれた私。しかし、せっかく選ばれたのに、自信の無さが踊りに現れます。見られていることに対する恐怖心を抱き、なかなか上達することが出来ません。そんなある日、先輩が私に話してくれました。「最初から決めつけたらいかんよ。誰も最初から出来んっちゃけん。絶対頑張ればみんなと同じように踊れるけん、諦めたらいかんよ。自信持って!」その言葉は、心の奥の奥まで響きわたりました。その日から、毎日練習しました。学校から帰って、何回も何回も繰り返しました。チア連の日、先輩の前で踊ると、「すごいやん!ちゃんと出来とるよ!頑張ったね!」泣いて喜んでくれました。その時、先輩からもらった言葉は、私の自信へと繋がってゆきました。

人前が苦手だった私、少しずつ少しずつ変わり始めました。「歌を絶対に仕事にしてみせる!」挑戦し始めたのです。うまくいかず、くじけることなんて何百回もあった、もう無理だって思ったことも何百回もあるし、悔しくて泣いたことも、本当に数え切れないくらい苦しいことはあった。だけど、あの時の先輩の言葉、高校3年間で身につけた信じる心、決して諦めない忍耐、そしていつも支えてくれている人に対して素直に「ありがとう」と言えること、その一つ一つが力となって私をここまで連れてきてくれました。

あれから10年。今、私は歌を仕事にしています。でもまだまだ挑戦はこれからです。 何をしたいのか、どんな仕事に就きたいのか、これから悩む時期があると思います。でも、せっかく香椎高に来たのなら何でも精一杯やってみる!きっとこれが答えに繋がってゆくと思います。そしてやりたい事が見つかった時、きっとあなたはあなたの手で掴むことが出来るでしょう。

香綾会コラム No.52「時を越えて」
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