香綾会コラム

No.24「海での想い・・・その2」

    

中野 公一(旧姓:穴吹)(高31回生)

前回に引き続き、洋上からの話にお付き合いいただきたいと思います。まず、お話の前に一つお詫びを申し上げます。前回のコラムは「海の男の想い・・・」と題したのですが、ある方から「現在は、多数の女性自衛官がインド洋などで長期航海に従事しているので、『海の男』というのはおかしい・・・」とお叱りを受けました。正にそのとおりでして、早速訂正し、「海での想い・・・」と題名を変更いたした次第です。

さて、前回は夜間の星の美しさと流れ星についてお話いたしましたが、昼間のお話も少しだけさせていただきます。ここアデン湾では、天候が良く、波が穏やかな日中は、海面がコバルトブルーのカーペットに宝石をちりばめたかのようにキラキラしています。そんな時、イルカの群れがどこからともなく私達の船に近寄ってくることがあります。イルカ達は、船体のすぐ傍でシャープな泳ぎで、潜ったり、ジャンプしたりとシーワールドでも鑑賞できないような演技を見せてくれることもあります。そんなイルカ達の応援により、不思議と心の疲れを癒すことができ、長期の航海を乗り切る元気が湧いてくる気がします。

ところで、航海も長期間となってくると、段々と時間の感覚がなくなり、曜日の感覚が薄れてきます。時が速く過ぎるという点では歓迎すべきことなのですが、仕事の期限などをつい失念してしまうというように良いことばかりではありません。そこで、海上自衛隊では、乗組員に曜日の感覚を取り戻させるための方策と言われていますが、金曜日(元々は土曜日の昼食メニューだった。)の昼食はカレーが定番となっています。カレーの香りがしたら「もう金曜日か・・・今日は出港してから何カレー?」(「何カレー?」とは何回カレーを食べたか?つまり出港後何週間経過したか?という期間を勘定する乗組員間の共通語)という会話があちこちで聞くことができます。私は7月末で20カレーを迎えました。(ということは、20カレー×7日=航海日数140日)

話が、脱線してしまいました。

私は、ここソマリア沖・アデン湾での海賊対処活動に従事し始めて、約4ヶ月が経過しようとしています。航海中、美しい海でのイルカのショーや天の川、北斗七星、オリオン座やシリウスなどの満天の星空など、大自然の優しさに触れることができました。一方、海が荒れた時には船体は軋み、左右30度にも及ぶ動揺、そして艦首が波に突っ込むなどの非常に厳しい航海となる時もあります。洋上では、時に大自然の猛威を感じます。いくら船体が大きくなろうと、いくら船の性能が高まろうと、自然の前には人間の知恵も力も微々たるものということを改めて知らされます。また、私は、この行動中、家族は勿論のこと、香高窓生の皆様、同窓会幹事を通じて再会した同級生からの激励や暖かい言葉を頂き、どれほど励まされたかは言葉では言い表せません。人は大自然の中では微々たる存在ですが、人と人とのや思いやりの気持ちは、大自然を相手にしても決して負けることのない勇気や精神力を与えてくれるように思います。

大自然の雄大さを知り、そして私達を応援してくれる人々を知る。私が皆様に伝えたい「海での想い」・・・それは、大自然への敬意、そして応援して下さる人々への感謝の気持ちであることをここに記します。

最後になりますが、ここアデン湾から、私の「海での想い」を流れ星とイルカに託したいと思います。「本当にいつも応援ありがとうございます(^-^)v日本に戻るまであと4カレーです!!」・・・☆

追伸:
貿易で海上交通(商船)による輸送量は、全体の約99.7%を占めています。また、アデン湾を通航する日本関係の船舶は、1年で2000隻を超える隻数です。海上交通は、経済だけでなく、日本の生存をも担っていると言うことができます。私は、海上交通への依存度などは数字では理解していたものの、ここアデン湾で日本関係船舶の護衛に従事するまで、それを実感することができませんでした。海賊の脅威の中で、また海上での厳しい環境に耐えておられる商船乗組員の皆様に敬意を表します。

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